秋山は5年ほど前に阿蘇までドライブした時に立ち寄って山麓を下見していた久住山に登ってきた。ピリッと冷え込んだ秋の北アルプスも好きで迷ったのだけど、九州の山のまだ見ぬ風景に強く惹かれた。
仕事終わりに大阪の南港からさんふらわあに飛び乗って船旅でのアクセス。二人部屋が取れたので交通費と前泊分のホテル代がセットになったようなものでお得感があった。
DAY1 長者原→坊ガツル 10/7
明石海峡やらしまなみ海道を眺めて就寝して、目覚めれば湯けむり立ちのぼる別府の街が眼前に迫っていた。
別府の街の背後には由布岳が見えて、船旅の旅情感と合間ってテンションがあがる。
別府からはレンタカーで長者原までドライブ。10時20分長者原着。
ラムサール条約登録地でもある湿原帯を歩く。真ん中に見えるのは硫黄山。その山容が火山であることを教えてくれる。
フラットなトレイルをゆるゆると歩く。歩き出しが遅かったので連休にも関わらず人が少ない。
見たことのない木肌。植生もわずかに違うのか、いつも登っている山とは少し違う部分を楽しみながら歩く。
前方には大船山が見える。幕営地の坊ガツルに着いてから時間があれば登りたい。
再び樹林帯に入る。土の色が火山帯を歩いていることを実感させる。
急登もなく本当にゆるゆると歩いて行くと前方が開けて坊ガツルが見えた。北アルプスで言えば涸沢のような位置付けなのだろうか、テントが1500張り張れる広大な幕営地だ。
風にそよぐススキが陽をきらきらと反射して美しい風景を演出してくれる。思わず立ち止まって見とれてしまう。
大船山に登るつもりがあまりにも居心地がいいので、昼寝をしたりぼんやりと周りを眺めたりして過ごす。
テントの数はそこそこあるのに広すぎて空いているように見える。
夕方、徒歩15分の法華院温泉にお風呂とビールの買い出しに行く。
法華院温泉から坊ガツル全景、17時を過ぎてもまだ明るいので西に来たのだなと実感する。赤く染まる山肌に湧き上がる雲の影が映っていたのでなんだろうと思っていたのだが、硫黄山から吹き上がるガスだった。
幕営地から見た硫黄山のガス、風がなくしんとして静かに立ち上る様子は足下の大地が生きていることを想わせる。
温泉から戻って夕食、いつものメニュー。これだけアクセスが楽なら生食材を持って来ればよかった。周りからは焼き肉などのいいにおいが漂ってきた。
陽が落ちてもそれほど寒くならない。19時就寝、遠くの方から鹿の鳴き声が聞こえる。夜中にトイレに起きてテントから出ると、ススキ野原が月明かりに輝いて幻想的にゆれていた。
DAY2 坊ガツル→久住山→牧ノ戸峠 10/8
5時起床、隣のテントと離れているので人の気配を感じずに寝坊気味になってしまった。
明日野焼きがあるようでこのススキ野原を見るにはギリギリのタイミングだった。
法華院温泉まで来ると朝日が差し込んできた。坊ガツルを振り返る。またいつか来ようと思わせる居心地のいい場所だった。
7時過ぎ、法華院温泉からスガモリコースに入る。朝日を浴びながらの上りなので少し登ると暑くなり、フーディニを脱いでTシャツ一枚になる。
Tシャツ一枚でも日焼け止めを入念に塗っておくと体力の消耗を抑えられる。
初めて見るトレイルの風景は本当に楽しい。足裏の感触であったり、においであったり、初めての感触を楽しんで登る。背後には坊ガツル。
法華院温泉から40分ほど登るとフラットで広大な風景が広がった。
前方のピラミッドの様な山の手前を左に曲がると今回の山行のハイライトである北千里ヶ浜だ。
島国の山とは思えない広大な空間を歩く。山登りをしていてよかったと思える瞬間だった。
右に硫黄山、左に陽に輝くススキを見ながら歩く極上のトレイル。
ここまで人にはほとんど会わなかったのだが、牧ノ戸峠からたくさん登って来ている様で一気に賑やかになる。バックパックを分岐にデポして久住山を目指す。
9時40分、久住山ピーク着。さっきまでは青空が見えたのにあいにくのガスに、阿蘇の方は残念ながら見えなかった。
久住連山を全部回る時間はなかったけど、せっかくなので御池まで行って来た。想像以上に大きな池だった。
どことなく北アルプスの折立から太郎までのトレイルを彷彿とさせる。
樹林帯まで下りて来ると日差しが暑い。下山ラッシュで渋滞気味だ。
13時半、牧ノ戸峠下山。少し休憩してからやまなみハイウェイ沿いに長者原まで戻った。
下山日は別府で泊まって温泉と食べ歩き。久しぶりに泊まったドミトリーでは快適に過ごせた。
初めての九州登山、久住山は広大かつ雄大、そして緩やかで優しい気持ちにさせてくれる山だった。
翌日、帰りの飛行機の中から石鎚山を見て次はここに登りたいなあと、まだ登ったことのない、見たことのない風景に想いを馳せる。まだまだこの先には楽しみが膨大に待っている。