お盆は蓮華温泉から白馬大池に上がり、2日目に朝日小屋まで、3日目に五輪尾根経由で蓮華温泉に戻るという周回コースを歩いてきた。
DAY1 蓮華温泉→白馬大池 8/13
初日は白馬大池までなので、神戸から始発で北アルプスにアクセスするという初の試み。10時11分、糸魚川駅着で10時20分の蓮華温泉行きバスに乗ることができた。蓮華温泉までの道は細く、急勾配に急カーブとなかなか険しかった。下界は晴れて日差しが強かったのだが、高度を上げるに従って完全にガスに飲まれた。
12時15分、ハイクスタート。さすがに今から登る人は他にいない。
2日目に10時間近く歩く予定なので、今回は妻もrayway backpackだ。
登り始めて数分、前方から下りてきた人が、5分前に熊を見ました、と怯えた顔で言うので我々もビビる。まさかねえ、とか言いながら手を叩き、笛を鳴らし、喋りながら登る。しばらくそうして歩いていたのだが、上から次々に人が下りてくるので大丈夫のようだった。
花もそこそこある道なのだが、ガスのせいもあって終始見通しが気なくて面白くない登りが続く。しかし、予報ではいい天気なはずなのだが。
今回もクロスオーバードーム。互い違いに横たわればふたりで使える。ひとりで使うより結露は酷くなるだろうということで、SOLのエマージェンシーブランケットをフロア内に引いた。壁側に少し立ち上がるサイズなので、寝袋が壁に触れて濡れるのを防止できる。
17時、夕食にする。このフリーズドライのカレー、あまり期待していなかったのだが想像を超える美味さだった。
大池のほとりまでテントが張られていた。ここをベースにして白馬に登る人が多いみたいだ。
19時就寝。明日はどこからアクセスしても長時間かかる朝日小屋を目指す。
DAY2 白馬大池→朝日小屋 8/14
3時起床。朝食は中華粥とバームクーヘン。昼食の仕込みもする。
4時半、撤収、ハイクスタート。充分明るくてヘッドランプはいらない。
少し高度を上げて振り返ると、白馬大池とテント場、そして紅く染まる東の空。
稜線に出て西側を見ると、雲海の中に今日越えていく雪倉岳が見えた。
東側を振り返ったりと忙しい。2年前は雨でほとんど何も見えなかったので嬉しさがこみ上げる。
この中を歩けるだけでも大満足なのに、今日はこの先にまだ見ぬトレイルが待っているのだ。
このあたりから白馬山荘や頂上宿舎からのハイカーと沢山すれ違うようになり、トレイルは大賑わい。
来た道を振り返ると見て来た風景と全く違って見えるから面白い。
少し休憩してから、ザラザラと崩れるトレイルに足を踏み入れる。
フラットで抜けのいい素晴らしいトレイルが待っていた。そして前方には青空。
これから越える雪倉を眺めて休憩。ガスが晴れて浮かれていたが、まだまだ先は長い、まだ半分も歩いていない。
その巻道にひとつめの雪渓。今回はアイゼンを持って来たがここは使わなくて済んだ。
8時45分、雪倉岳避難小屋着。綺麗に管理された避難小屋でトイレもある。
ここで昼食にする。朝仕込んでおいたおにぎり、初めて使ってみたけど美味しい。休憩中に同年代ぐらいの夫婦のペアがふた組と学生の山岳部パーティーが白馬側から着いて、ここから先は朝日小屋まで抜きつ抜かれつ行くことに。
来た道を振り返る。白馬が遥か彼方にある。結構歩いて来ている。急勾配もなく広々として歩きやすく、花は豊富で地形は変化に富んでいるので、歩いていて全く飽きないトレイルだ。
少し休憩して先に進む。雪倉岳のピークを越えると火星のような地形が現れた。
最高のセクションなのだが、ガスに包まれているので距離感が鈍ってくる。朝日小屋までは雪倉岳を越えてからが長いと聞いていたけど、予想以上に長くなるのだった。この時点で11時半、余裕のペースだと思っていたけど、次の水平道の分岐までがまず長かった。
樹林帯まで下りてきた。雨は降っていないが湿度が高く、無駄に汗をかく。アブと蚊も多く、さっきまでの快適な稜線歩きが嘘のように不快感に包まれながら歩く。
そろそろ水平道の分岐じゃないだろうかと思ったのだが、まだ燕岩だったりする。
12時40分、水平道入口着。朝日岳経由の道もあるのだが、迷わず水平道に進む。
水平道に入ってすぐにキヌガサソウを見つけて、いい道だなあと思ったのだが。
鬱蒼として見通しは効かず、おまけに水平道の名前にそぐわなくアップダウンが激しい。
地形図をよく見ると朝日岳から伸びるいく筋もの尾根を横切るようにトレイルが付いているので、アップダウンが激しいはずだ。沢筋に下りて、また登るの繰り返しが何度も続く。
忍耐の時間を乗り越えて14時21分、ようやく朝日小屋が見えてきた。雪倉岳を越えてから4時間半、白馬大池を出てから10時間、長かった。
昨夜の結露と霧雨でしっとりと濡れたクロスオーバードーム。妻にこれは何かの罰ゲームなのか?雨が降ったらおしまいやな?と言われながらせっせと幕を張る。
今回の山行の目的は素晴らしい稜線を歩くことがまずあったのだが、何よりも楽しみにしていたのが朝日小屋の夕食である。10時間以上かけてせっかくここまで来たのだから食べずに帰ることは出来ない。テント泊の人もたくさん注文していた。山でここまでの物が食べられるのは凄いことだと思う。
相変わらずの霧雨、明日も8時間近く歩くので18時過ぎに就寝。栂海新道を親不知までいく人も多く、テント場はあっという間に静かになった。
DAY3 朝日小屋→蓮華温泉 8/15
雨は本降りにならなかった。0時半に早出の人が動き出して目がさめる。うとうとと過ごして2時起床、すでに撤収して出発している人が多い。こんなに早く動き出すテント場は初めてだ。あらためて山深さを実感する。
バームクーヘンとボルシチの朝食を終えて、ヘッドランプを灯して4時ハイクスタート。
なかなかいい道だ。昨日は水平道よりこっちにした方がよかったかもしれない。
5時、朝日岳ピーク着。360度の大展望らしいが何も見えない。
アイゼンが必要だと思われた吹上のコルの雪渓も必要なく下ることが出来た。
どろどろにぬかるんだトレイルが続く。高度を下げると再び晴れ、蒸し暑くなる。
振り返ると朝日岳が見えた。今回の山行で初めて見る朝日岳の姿。
樹林帯まで下りてくると、どろどろにぬかるんだ狭いトレイルが続く。泥まみれのシューズは木道でも岩でもよく滑る。立ち止まるとアブと蚊が襲ってくる。忍耐の下りが続く。上で体験した素晴らしいトレイルを思い、素敵なものはそう簡単には手に入らないことを身を以て知る。
蓮華温泉までは登りが続く、下りで疲れが溜まって来ていたところに最後の試練。そして再びの雨。
12時21分、蓮華温泉着。昨日同様長い道のりだった。なかなか厳しい道のりだったが昨夜の小屋飯のパワーが効いている。
温泉に入り、下りのバスの時間まで山荘でゆるりと過ごす。
今年は残雪が多く、しかも悪天候が続いていていつもとは違う北アルプスだった。その中でも今回はぎりぎり快適に歩ける天候に恵まれてよかった。妻は10時間近く歩くのはかなり以前に行った屋久島以来だったのでどうなるかと思ったけど、よく頑張ってくれた。これもraywayでなければ無理だったかもしれない。白馬から朝日小屋へのルートは人が少なくマイナーなのかもしれないが、静かで、広く、花が豊富で本当に素晴らしいところだった。長く辛い歩きにはなるが、それだけに手に入るものはこの上なく素晴らしい。