折立〜雲ノ平〜新穂高 DAY,2 8/14

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二日目、3時に起床。

昨晩に引き続き激しい雨がフライを叩いている。雨の音で眠れたのは数時間。昨日の時点で雲ノ平を諦める人もちらほら居たので、今日はどうしようか?停滞か、黒部五郎へ稜線を歩くか、それともいっそ折立に下りるか。雨が打ち付ける真っ暗闇で悶々と考える。

とりあえ朝ご飯。最近、山の朝飯の定番はお茶漬け。食欲なくてもサラッと腹に入るので良い。それと鶏そぼろのふりかけ。

食べ終わって思い切ってテントを出てトイレに行くと順便万端で出発する人が。黒部五郎経由で三俣まで行くらしい。ヘッドランプ灯して、土砂降りの中暗闇に消えて行った。ぼくはテントに一日籠るのも嫌なので太郎へ行って様子を見ることにした。

荷物まとめて明るくなるのを待って、一気にテントをたたむ。つり下げ式のテントなのでインナーはそれほど濡らさずにしまい込めた。でも、あらゆる物が水を吸っていてザックがもの凄く重い。何人か同時に撤収を始めて、土砂降りの中、必死の形相で無言で右往左往している。

太郎小屋が見える所まで来ると雨は小降りに。小屋に情報を集めに行っていたパーティーが戻って来たので話しを聞くと雲ノ平は行けるっぽい。

小屋に着いて屋根の下でパッキングをやり直してストレッチしていると、急に明るくなってきて雨がやんだ。小屋の窓から人が次々に顔を出して歓声を上げる。

6時49分、雲ノ平へ向けて出発。

どんどんガスが上がって行く。

標高2300メートルの太郎から1900メートルの薬師沢まで一気に下る。しばらくは木道が続く。スリップしないように気をつけてゆるゆると歩く。

下って行くと樹林帯に入る。時折雨がザーッと降ってくるのでレインジャケットを脱ぐわけにいかず汗と蒸れで全身びしょ濡れ。途中で試しにフーディニに着替えると、これがかなり快適。防水性は無いが撥水性が凄いので雨粒が生地の表面を転がるように落ちて行く。極薄なので蒸れ感もそれほどない。

雲ノ平が見えてきた。写真では分かりにくいけど絶壁並みの登り、ここを標高2300メートルまで登り返せば雲ノ平だ。

2時間ほどで下り切って薬師沢小屋に到着。凄い所に小屋がある。こんな天気でも沢登りの人たちがどこかへ出発して行く。

黒部川を渡る。この川が黒部ダムを経て日本海に注ぐ。今回は天候次第で稜線を歩かないで黒部の源流を通るルートも考えていたのでこのまま雨が続けば源流に行くことになりそう。下が透けて丸見えでちょっと恐い。

薬師沢小屋と橋。

黒部川下流方面。この頃にはカメラがびしょ濡れに、レンズも曇ってしまった。

雲ノ平への登り、傾斜がきつく膝をついて張り付くように登る。岩がごろごろしていて、道が沢みたいになっている。このセクション、相当キツくて写真はほとんど撮ってない。

一歩一歩勝負を挑むように登ること2時間。視界が明るくなってきた。こういう時は身勝手にも神の存在を信じる。

ついに雲ノ平の木道に達した。

すばらくうっそうとした樹林帯が続く。雨に濡れたところに光が差し込んでかなり幻想的な世界。

木漏れ日がトレイルを照らす。この先にあったのは…。

アラスカ庭園。

アラスカっぽいのかどうか分からないけど雲ノ平の名所のひとつで、ここで休んでた夫婦が写真を撮ってくれた。おまけに飴ちゃんふたつくれた。

青空だ…。

雨のお陰で水量豊富な湿地帯。

奥日本庭園。ハイマツが多いから日本庭園。

太陽は一瞬姿を見せたと思ったらすぐガスに隠れる。

誰も居ない雲ノ平を行く。

13時、やっと雲ノ平山荘に着いた。形の良い小屋で風景に映える。

とりあえず今日の頑張りへのご褒美にカレー。小屋の中はほんのり暖かくクラシックが流れていて、天気の変化が激しい外からここに入るとまるで別世界。すごい安心感がある。

ビールを買い込んでテントサイトに向かう。小屋からは20分ほど離れている。少し離れると小屋がガスに包まれる。

急に晴れる。

もやもやの向こうにテントサイトが見えてきた。

15時、やっとテントに転がり込むことが出来た。

実は薬師沢で左膝を痛めていて一歩歩く毎に激痛が走っていて戻ることも考えたけどなんとか来れた…。疲労感と安心感でぐったり。

もう、酔っぱらうしかない。

ここまで気力で歩いて来たけど一度腰を据えて再び立ち上がると痛みが激しくて歩けず、テントでビール飲みながら目の前の風景をただぼんやり眺める。雲ノ平をベースキャンプに楽しむファミリーの歓声が聞こえる。おや?、あの人は薬師で隣にテント張っていた人だ。話しかけたいけど気力が…。歯がゆい、ただ、ビールをあおる。

明日、どうしよう?

とりあえずタオル濡らしてアイシングして、晩ご飯は親子丼。

今夜も大雨と予想して小屋に泊まる人が結構居たけど降る気配はない。

陽が落ちると同時にテントサイトは静寂に包まれた。時折、風が吹いてぱたぱたとフライを鳴らす。ヘッドランプの光の先に吐く息が白く立ち上る。空には満天の星空。脚が痛くなかったら、どんなにいいだろうか、この瞬間。

ほんと明日どうしよう?