先日久しぶりにブログをアップしました。2019年の八峰キレット以降から2022年末までのいわゆるコロナ禍の間の登山も遠征をメインにダイジェストでまとめておきます。
ブログを書いてなかっただけあってかなり記憶が曖昧で、写真を見て思い出しながら書きました。やはり記録としてすぐに書いておかないと忘れていくのでもったいないなと思いました。
2020年9月 雷鳥沢キャンプ場から剱御前まで
2020年、夏は北アルプスに行けず、9月に一度行ったきりだ。
雷鳥沢キャンプ場をベースに立山縦走の予定だった。
着いていきなりの雨、室堂で雨宿りしつつ出るか出ないか随分迷った挙句、思い切って飛び出した。雷鳥沢キャンプ場に来たものの横殴りの雨で一度張ったテントを管理小屋のすぐ横に張り直した。
キャンプ場には我々のテント以外に2張りあるのみだった。
体を濡らしてしまったのでテントでシュラフにもぐり込んでこれからどうするかを考えたり、ダウンロードしてきた韓ドラを見たりしながら初日はテント内で過ごした。
翌日の9月26日、午前中は天気が持ちそうだったので剱御前小舎を目指して出発した。
秋が深まる静かな雷鳥沢キャンプ場。
秋の北アルプスには静寂と頭がさえる心地のいい寒さの中、燃えるような草紅葉が光を受けて輝き、夏とはまったく違う世界が広がっている。
雨に降られる前に剱御前小舎着。剱沢にテントはなく、ここまでも誰にも会わなかった。
奇跡的な晴れ間が訪れた。秋の空気は澄んでいるのか、とてもはっきりと剱岳が見えた。
ガスが湧き、雨も降り出しそうだったので雷鳥沢に戻る。
天候の回復が見込めなかったので2泊の予定を1泊で切り上げて富山の街に降りて観光して帰ることにした。
剱岳を見ることができたし、少しだが北アルプスを歩くこともできたので、何かと大変だった2020年の中で意義ある山行になった。
2021年7月16日〜18日 薬師岳
2021年7月、2年ぶりの夏の北アルプス。久しぶりなので通い慣れた薬師岳へ。
山に行けないストレス発散なのかラグジュアリーなテントを買っていたので薬師峠に2泊というゆったりプラン。
ホーボーズネスト2、少し重いがコンプレッションを効かせばYAMABU R1プロトタイプにも入る。縦走をしない今回の様なベースキャンプに張るには最高のテントだ。出入り口が両面にあり、前室はフライが張り出しているので雨が降っても開けておくことができ、停滞時でも開放感を得ることができる。
久しぶりに夏山の夕焼けを見た。
2日目、薬師岳に登った。
少ないながら残雪はある。こうして見てると気候変動でこれから山に登る最適な季節は6〜7月になってくるのではないかと思う。
チングルマの花も久しぶり。
薬師岳は北アルプスで一番登っている山だ。折立から入るコースは広大な抜け感がある折立街道に始まり、巨大山塊の薬師岳へと続く風景のダイナミックな変化を楽しみながら歩くことができる。
薬師岳ピーク、新造前の祠。
天気がよく五色ヶ原、立山方面がきれいに見えた。
薬師岳からの下り。黒部五郎岳とそこへと続く稜線が見えた。
この時は初めての試みとしてサーマレストのZライトソルを収納してバックパックに装着できるOMC(おマットケース)を使ってみた。マットを取り出してショルダーベルトを取り付けると、アタックザックにも使えるツーウェイ仕様だ。
久しぶりに北アルプスのピークに立つことができ、満足度の高い山行になった。
2021年10月16日〜17日 八ヶ岳・しらびそ小屋
しらびそ小屋に初めて行ったのは2011年2月のことなので、ほぼ10年ぶりの再訪になった。
その時は宿泊客は我々夫婦ふたりだけで物静かな親父さんがひとりでもてなしてくれた。2匹の犬たちもとても静かだった。小型犬は眼が見えないのか、歩く度にそこら中に鼻先をぶつけていた。
静まり返った雪の中を小屋まで歩き、静かな小屋の中、暖かいこたつで昼寝をした。夕食時になると親父さんが”ご飯ですよ”とひと言かけて起こしてくれた。そして3人でストーブを囲みながら静かに夕食を食べた。
とにかく居心地のいい小屋でいつか再訪したいと思っていた。
今回は妻、義妹、山の師匠という珍しく4 人パーティーでの山行になった。
麦草峠まで車で行って入山の予定だったが、麦草峠の駐車場が満車だった。さらに入場待ちの渋滞が延々続くという状況。急きょ、稲子湯からの入山に切り替えたものの麦草峠の状況を考えると稲子湯も駐車できるか分からなかった。結局、茅野駅前に車を置き、タクシーで稲子湯を目指すことになるというドタバタの入山になった。
なんだかんだで14時に稲子湯スタート。普通ならありえない時間のスタートだけど、小屋に事情を説明して遅くなりますと電話を入れておいた。
いつもと違う時間帯の登り始めなので光の加減がいつもと違う。
バックパックはR1 プロトタイプのLサイズ。
入山までのドタバタで疲れていたので小屋までの緩やかな登りをゆっくりと歩いた。
16時半、しらびそ小屋着。
当初の予定では夏沢峠、さらには硫黄岳までと考えていたが全ての予定が狂ってしまっていたので無理せずに小屋を満喫して翌日下山することにした。
朝ごはんは名物の厚切りトースト。
そしてこれも名物のリスたち。
ドタバタ山行だったが今回も小屋は静かで日常を離れた時間を過ごすことができた。
2022年7月22日〜24日 雷鳥沢キャンプ場をベースに周辺散策
この頃はコロナの流行具合を見て山に入るタイミングを測っていた。昨年の雷鳥沢のリベンジとして再びの雷鳥沢。
例によってR1 プロトタイプにOMCを搭載。
天気は良くなくて立山はガスの中だった。
初日は雷鳥沢まで行って大日方面を少し歩く予定だ。
今回はホーボーズネスト2で、手持ちのテントの中で最もラグジュアリーで最も重い。重いけど持ってくる価値が充分あるテントだ。雷鳥沢の雪渓では学生たちがスキーをしていた。
スキーを少し眺めた後、大日方面へ。
残雪が多いように見えるがこれでも少ないらしい。
新室堂乗越から室堂乗越辺りまで歩いて満足したのでテントに戻った。
2日目は雨予報だったのでテントで過ごしてもよかったが、やはり歩きたくて一ノ越まで行くことにした。
雨でも去年来た時よりも人が圧倒的に多かった。山に人が戻ってきているのを感じた。一ノ越に着いて雄山を見上げて、雨はそれほど強くないし登ろうかとも思ったがガスで真っ白なので諦めて下山することにした。
帰りは一ノ越から雷鳥沢まで真っすぐ続く立山の中で一番好きな道を歩いた。
ここは緩やかで開けているのでダイナミックな山歩きを楽しめる。雨でもやはりいい道だと思った。
最終日は晴れ。
時間の関係で立山縦走は諦めて前回同様剱御前小舎を目指すことにした。
4時半、朝焼けを目にしながら登る。
立山がきれいに見えた。見えるか見えないかでこんなにも気分が違うものかと思うほどいい気分だった。
剱御前小舎に着いた後、まだまだ時間があるし、まだまだ歩きたいと剱沢キャンプ場まで行くことにした。
キャンプ場に下るまでの道がすてきだった。目の前に剱岳をとらえ、開放感に満ちた山歩きができる。
6時40分、剱沢キャンプ場着。テントの数は多いがみんな剱岳に取り付いていて無人のキャンプ場だった。
間近で見る剱岳は以前見た時よりも緑が濃くなっているように思った。
時間なのでどうやって帰ろうかとなった。こんなにいい天気なのに帰るのはもったいない、もう少し歩きたいと思った。真っすぐ雷鳥沢に戻らずに新室堂乗越経由で戻ることにした。
前方に大日をとらえつつ、しばしの稜線歩きを楽しんだ。
コバイケイソウの群生地を抜けて雷鳥沢に下った。
ピークは踏まなかったが北アルプスを歩くことができて満足感で一杯の山行だった。
2022年9月9日〜11日 槍沢から南岳、槍ヶ岳
2022年8月、ついにコロナに感染して10日間の自宅療養をする。リモートワークのできない仕事柄、どんな時も欠かさず出勤し、感染には気をつけていただけにショックな出来事だった。
前々から計画していた久しぶりの北アルプスソロ山行。病み上がりで計画自体どうしようかと迷ったが、ここで行かなかったらもう登れない体になってしまいそうな気がして行くことにした。
岳沢から奥穂の予定だったが雨のため奥穂は断念。小雨程度だが病み上がりの身で岩陵帯を歩く自信はなかった。オプションの槍沢から南岳に上がって槍ヶ岳に向かうコースに変更した。
13時、ババ平着。
テントはクロスオーバードームのスカイハイマウンテンワークス別注品だ。結露は結構するがシュラフカバーと大きめのインナーシートで対策すれば体を濡らすことはない。
着いた時は誰もいなかったが、昼寝をして16時頃起き出してみるとそこそこの数のテントが張られていた。
翌日は快晴、まず天狗池経由で南岳を目指す。
天狗池の逆さ槍。このルートを歩く人は少なく静かなソロハイクとなった。
病み上がりの体には核心部と言える横尾尾根を登る。9月にしては暑く、休憩を多めに取って体力の消耗を押さえつつ登った。
登ってきた尾根を振り返る。よく登ってきたなと思った。稜線までもう少しだ。登り切れそうだと思った。
8時50分、稜線に出た。バックパックを分岐にデポして南岳を目指す。
15分ほどで南岳ピーク着。ここまで来ると小屋まで行ってみたくなって南岳小屋でコーラを買う。以前はペプシのみだったのに今回はコカコーラがあった。
休憩をじゅうぶん取った後、今回のハイライトとなる槍ヶ岳までの稜線歩きを楽しんだ。
以前、ジャンダルムと大キレットを超えてこの稜線を歩いた時は息切れがひどかった。数歩歩いては深呼吸を繰り返すという状況だったのに、今回は病み上がりなのにまったく息切れがなく快調に歩くことができた。
歩けば歩くほど槍が近づいてくる。
もうゴールは目の前だ。
12時40分、幕営。
槍ヶ岳に登るつもりはなかった。
テントで横になったのだが興奮しているのか、疲れがないのか、なかなか眠れなかった。ごろごろしながらふと、槍ヶ岳を登るなら今が絶好のチャンスじゃないのだろうか?という思いがよぎった。天気や休みに恵まれず、登りたい時に登れなかった山が沢山ある。目の前には槍ヶ岳がある。天気は悪くはない。次はいつ来ることができるか分からない。そう思った瞬間、ヘルメットをつかんでテントを出ていた。
眺望はなかったが登っておいてよかった。ピークには海外からの登山客が多く、下山の順番待ちをしている時にコミュニケーションを取り、写真を撮り合ったりし、忘れられない体験になった。
夜、テントでシュラフにもぐっていると小屋の方から中国語の合唱が聞こえてきた。そう言えば今夜は中秋の名月だったなと思いながら眠りについた。
翌日は背後のモルゲンロートを何度も何度も振り返りながら槍沢を下った。
こうして3年間をあらめて振り返ってみると、満足のいく山行は全然できていなかったと思い込んでいたが、それなりに実りのある山行をしていたことを知る。雨なら雨で次に生かす経験を得ることができる。ピークを踏まなくても満足のいく山歩きはできる。トラブルがあっても最良の判断をすればそれなりに楽しめる。
いずれにしても山に行っていなければ起きなかったことなので、この3年間、世の中の状況を見つつ、行くか行かないかで何度も逡巡しつつ、行ける時に隙を突いて山に足を運んだことは自分の中で、山に関わる意味でも、人生においても停滞を招くことはなかった。