昨年に始めた高島トレイルセクションハイクの続きを歩いてきた。
今回は寒風から水坂峠までを歩く。水場は少なく、人里も離れるので高島トレイルの中では難易度の高いセクションになる。
昨年の記事はこちら→中央分水嶺・高島トレイルセクションハイク 国境→寒風 2DAYS 5/7-8
冬の間はもっぱらスキーがメインだったので、登山は1月4日の雪の武奈ヶ岳以来だ。
高島トレイルセクションハイク DAY1 5/5 寒風→大御影山
7時45分、ハイクスタート。昨年、新緑の中を下ったマキノのスキー場跡を登る。快晴で日差しを遮る物がないので登り始めて数分で滝汗をかく。キャプリーン2を着ていたが半袖Tシャツがちょうどよかったかもしれない。
今年は雪が多かったので昨年はゲレンデ一面に生えていたゼンマイはまだまばらだ。
ゲレンデを登りきるとブナの森に入る。新緑はまだ少なめで始まったばかりだ。
9時50分、寒風着。快晴でマキノの町並みと琵琶湖が綺麗に見える。
ここから高島トレイルが始まる。ほとんどのハイカーが赤坂山に向かうのとは反対に南に向かう。急に人の気配が消える。
大谷山への草稜帯は開放感があって気持ちいい。夏は暑そうだけど。
琵琶湖を見て後ろを振り返ると、日本海が見える。分水嶺に立っているのを実感する。
稜線の彼方に今日の目的地の大御影山の反射板が見える。あそこまで歩くのかと思うと一瞬力が抜けるものの、次の瞬間にはまだまだ今日のお楽しみがあるのだとわくわくしてくるから山歩きは不思議だ。
大谷山まで何人かハイカーがいたがみんなマキノに下りて行った。ここから先のトレイルは踏み跡が不明瞭で荒れている。
12時半、抜土着。ここで給水する。今回の行程で唯一の給水ポイントだ。そのままでも飲めそうだが飲用水だけSAWYER MINIを使って浄水する。調理用と合わせて全部で4リットル給水。
水場は残雪が多くて水量豊富かと思いきや割と少なめだった。夏場など雨が降らなければ枯れてしまいそうだ。高島トレイルをハイクするならやはり今がベストシーズンなのかもしれない。
今年は花も遅めでトレイル脇に沢山咲いていた。これはイワウチワ。
13時半、ビラデスト今津から大御影山へ登るトレイルである近江坂に合流。抜土からここまでは高島トレイルを開通させるために拓いた新道なのか、踏み跡不明瞭で急登が続いた。ここからは大御影山への登山者も多いので明瞭なトレイルが続く。
近江坂は古くから若狭に抜ける古道だったのだろうか、とても歩きやすい。
この辺りで久しぶりに他のハイカーに出会う。花を見にきた日帰りのパーティーだった。
14時半、大御影山着。山頂で大きなパーティーが休憩していた。高島トレイルを南から北上しているようだ。どうやら去年もすれ違ったパーティーと同じ主催者が組んだツアーみたいだ。ベストシーズンでしかも連休中だというのに高島トレイルをハイクしている人に全然会わなかったのでなんだか嬉しかった。やはりトレイルは人が歩いてこそ維持されるのでもう少し色んな人に歩いて欲しいと思う。
大御影山ピーク手前のブナの森にかなり広めの幕営適地があったが、そこはパーティーが使うようなので先に進んで他を探すことに。少し進むと若狭湾が見えた。山から海や湖が見えると地に足がついたような安心感を覚える。
すぐに幕営適地が見つかるだろうと思っていたのだが、なかなか見つからない。今日はすでに8時間近く歩いている。4リットルの水の重みもあり、足取りが怪しくなってきた。少しぐらい斜めになっていても妥協して張ってしまおうかと考えて進んでいると素晴らしい幕営地を発見した。ほぼフラットで風も当たらない、しかもブナに囲まれている。最後の力を振り絞って16時に幕営。
コーヒーを淹れて幕営地に見とれる。風が森を揺らす音、鳥、鹿の鳴き声、虫、小動物が枯葉を踏む音しか聞こえてこない。山に登ると、この瞬間のために登ってきたのだという何かに必ず出会える。今回はこの幕営地で夕暮れまで過ごした時間がそうだ。
今回初めて持って来たギアを試してみる。MSRのブリザードステイク、雪上用のペグだが21gという軽さに惹かれてトイレ用のスコップとして持ってきた。スコップとして使わない時は前室のペグとして使ったり、蚊取り線香の台にしたりと色々と使える。雨が降った時はテントの周りに水路を掘ったりするのにも使えそうだ。
日が傾いてくると幕営地は幻想的な雰囲気に包まれた。過ぎ去る時を惜しむように過ごす。
日が出ている内に夕食にする。浄水していない水でラーメンを作って水分と塩分も同時に補給。
高島トレイルセクションハイク DAY2 5/6 大御影山→水坂峠
3時半起床。今日は雨の予報でしかもまた8時間近く歩くので早出の予定だ。朝食を終えて撤収が済んだ時にパラパラと降ってきた。5時、すでに明るいのでハイクスタート。
降ったりやんだりを繰り返す中、三重獄を目指す。この辺りが最も人里離れて歩くハイカーも少ないので熊に注意しながら歩く。くねくねと幹と枝をくねらせた森と立ち込めるガスが不気味な雰囲気を醸し出して気持ちのいい緊張感を与えてくれる。
人の気配は全くない。トレイルなのか獣道なのか、テーピングとコンパスだけを頼りに歩く。
この辺りは今回の行程の中で一番不気味にも美しい不思議なセクションだった。
時たま熊かと思わせる獣の鳴き声が聞こえたり。そんな中、海が見えるとほっとする。
草稜帯を進む。この頃から本降りに。風も強く、稜線上では雨が真横に体を叩く。耳に雨が入ってくるので帽子のつばで塞ぎながら進む。
草稜帯が終わり再び不思議の森に入る。偽ピークをいくつも越える内に時間の感覚がおかしくなり、ルートもロスしているのではないかと不安になってくる。
分岐にザックをデポしてピークに向かう。分岐からピークまでの間はフラットなブナの森が広がっている。
7時40分、三重獄ピーク着。眺望全くなしなので早々に後にする。次は武奈ヶ獄を目指す。
相変わらず不明瞭なトレイルの中、なんとか迷わずに順調に進む。
ほとんど踏み跡が見えない開けた場所は迷いやすいが、テーピングがしっかりとあるので大丈夫だ。
この先も昔からの登山道ではなく、高島トレイルのために拓いた新道のようで、激下りが待っていた。
12時40分、水坂峠着。これで高島トレイルのおよそ半分を歩いたことになる。
しばらく杉林の中だったので気づかなかったが抜けてみると雨はあがって青空が広がっていた。
林道を下ると国道367号線に出た。ゴールデンウィークで行楽に向かう車が頻繁に行き交う。車道脇で濡れた装備を乾かす。行き交う車を眺めていると昨日と今日とで山で見てきた風景が夢のように思える。抜けるような青空に始まり、眺めたマキノの町、琵琶湖、若狭湾、満たされた時間を過ごした幕営地、ガスに霞むブナの森、怪しくくねった木々、吹き付ける風雨、わずか2日の間に目まぐるしい風景と自然の変化を体感した。
高島トレイルは実に濃密だ。早く次のセクションを歩きたい。