毎年恒例の八ヶ岳に行ってきた。車で行くことが多いのだが、今回は行きは茅野駅まで電車で、登山口の桜平へはタクシーでアクセス、帰りは美濃戸口からハイシーズンだけ出ている高速バスで帰宅という手段にした。バスは電車より1時間ほど多くかかるが交通費は半額ほどになるので、一度お試しで使ってみることにした。
DAY1 桜平→オーレン小屋⇄東天狗岳
天気予報は快晴。快晴の予報で山を登るのは今年初めてかもしれない。下の方は紅葉はまだまだこれからといった感じだ。
肌寒いのでメリノウールの上にパタゴニアのフーディニを羽織る。
夏沢鉱泉からは北アルプスが見えるので期待感とともに振り返ると、槍穂の稜線がくっきりと見えた。ここでこれだけ綺麗に見るのは初めてだ。昨年歩いたジャンダルムから槍までの稜線を目で追って感慨にふける。
前方に硫黄岳が見えてきた。もう少しで今日泊まるオーレン小屋だ。
12時、オーレン小屋着。ここからこんなに綺麗に硫黄岳を見るのも初めてだ。雲の多い八ヶ岳ではなかなか見られない。
小屋で休憩、昼食。その後13時半、東天狗岳へ向けて出発。今年は2400メートルを越えたあたりから毎回頭痛と吐き気に悩まされてきたが、今日は軽い頭痛があるだけだ。
薄暗い中、太陽光が斜めに細長く差し込むので、まだ昼間なのに夕方のような錯覚に陥る。
根石岳に向かって少し登って振り返ると硫黄岳が見えた。そしてその先には赤岳も見える。
14時、根石岳ピーク。前方に天狗岳。先月登れなかった鹿島槍と同じ、双耳峰だ。
根石、東天狗間の白いトレイル。ハイカーが多い。八ヶ岳は最近特に若い人が多く、女性のソロハイカーも多く見かける。牧歌的な雰囲気でみんな写真を撮りつつゆっくりと歩いている。北アルプスの、特に穂高で感じる生と死の境界線に足を踏み入れたかのような緊張感はない。
今回のレイヤリングは、寒いことを予想して、ファイントラックのスキンメッシュTシャツにアイスブレーカーのメリノウールロングジップネックの200、そして常にフーディニを着用。あとは薄手のグローブを小まめに着脱して体温調整をしてなるべく汗をかかないようにした。
このメリノウールシャツは7年ぐらい着ていてもうだいぶぼろぼろなのだが、持っている山ウェアの中では一番使用頻度が高い。
やはり山は晴れている時に登るのが一番いい。紫外線が強いので日焼け対策は必須だが。
夕食の17時まではストーブにあたりつつビールを飲んでまったりと過ごす。
夕食は例によって桜鍋。同部屋、相席になったソロ女子と話していると先月行った鹿島槍方面の小屋で働いていたとのこと。妻も小屋番をしていたことがあるので話が盛り上がっていた。
夕食後、歯磨きをしに外に出るとダウンを着ていても耐えられないほどの寒さ。天気が良かったので星が見えるかと期待したけど満月になる日が近く、月明かりが強すぎてほとんど見えなかった。
DAY2 オーレン小屋→硫黄岳→美濃戸口
二日目は5時に小屋番の人の朝食コールで起床。
今日もいい天気だ。オーレン小屋は谷間にあるのでモルゲンロートやご来光は見えない。上の方の小屋ではきっと凄い光景が見えているのだろう。
日に当たると暖かいが、日陰に入るとかなり寒い。昨日のレイヤリングに更にパタゴニアのR1を挟んでフーディニを羽織って登る。
硫黄岳に取り付いて展望の効くところで振り返ると、今日も北アルプスが綺麗に見える。
更に登って見ると、北アルプスの東側に中央アルプス、御嶽山が見えた。
夏沢峠から硫黄岳の登りは岩稜帯を歩いているような感じがあって好きだ。
何度も振り返って北アルプスを眺める。白馬も鹿島槍も立山も、形でそれと分かる。
7時43分、硫黄岳ピーク着。爆裂火口はいつ見ても足がすくむ。
ピークは赤岳鉱泉側からもすでにたくさんの人が上がってきていて賑わっている。
前方に阿弥陀岳、その後方に北岳を抱く南アルプスを眺めながらの至極の下山セクション。
いつも曇っていたのでこちら側から硫黄岳を見るのは初めてで新鮮だった。
大阪行きのバスは15時半発なのでゆっくりできる。赤岳鉱泉手前でコーヒーを淹れて休憩。
10時、赤岳鉱泉着。ここはテン場もある。そしてオーレン小屋同様、小屋にお風呂がある。いつかここにも泊まってみたい。
名物のアイスキャンディーの足場を小屋の人がメンテナンスしていた。
あとは美濃戸口を目指して緩やかに下るのみだが、かなり距離がある。
まだ午前中なのに、この陽の差し具合が夕方を思わせて、また不思議な感覚に陥る。
最後はなんだか上高地のような雰囲気のトレイルを歩いて12時半、美濃戸口着。
バスまで余裕の時間なので、八ヶ岳山荘でお風呂に入ってカレーを食べる。あとは心地よい疲れに身を任せてぼんやりと下りてくるハイカー達を眺めて過ごす。八ヶ岳はなんだかみんな和気あいあいとしていていい。疲れも気持ちのいい疲れで、空気感も北アルプスのように張り詰めた雰囲気はなく、のどかでのんびりとしていていい。八ヶ岳の好きな一面を噛み締め振り返りながらバスを待つ。
バスは15時半の定刻通り出発で大阪着が少し遅れて23時前だった。新しい車両で座席の足元に余裕があってなかなか快適だった。時間はかかるけど電車の半額程度なので、八ヶ岳遠征の回数が増やせるなら今後もバス利用はありかな思う。
目にした風景、出会った個性のある人々、八ヶ岳は気持ち的に余裕を持って登れるので、それだけに胸に残るものも多く、余韻が深い山だ。