大学時代を過ごした滋賀県の霊仙山に登ってきた。登るのは実に17年ぶりぐらいだった。大学には山岳部がなかったので友人数人と集まって山岳部を作ろうかと企んで滋賀県北部の山を登るようなことをしていて、その一座として登ったのだった。
結局山岳部は作らなかったのだが、霊仙山はぼくの登山人生の原点のひとつの山である。
今回は友人とペアハイク。ぼくの記憶では霊仙山は青春の1ページとして非常に爽やかなイメージとして残っているのだが、榑ヶ畑の登山口に着いた瞬間、そのじめっとした感じに爽やかな記憶はどこか遠くへと消し飛んでしまった。しかし、前日に雨が降ったとはいえ、これほどまでにじめっとしているとは思わなかった。
上空は爽やかな青空なので気を取り直して登山届けを出して、8時半ハイクスタート。
まず廃村に足を踏み入れる。この苔むして湿気った感じは、深呼吸すると肺の奥深くまで染み込んできて体が浄化されるのを感じる八ヶ岳の湿気とはひと味違うように感じる。
登ってすぐに飲み物の無人販売所がある。上からはテント泊装備の若い男性が二人下りてきた。恐らく頂上付近の避難小屋周りで張っていたのだろう。
汗フキ峠まではその名の通りそこそこの急登だ。ザックは軽いので木漏れ日の樹林帯を気持ちよく登っていく。
20分ほどで汗フキ峠着。ここで先に落合に抜けて西南尾根からピークを目指して周回するか、または逆かで迷ったが、まずはピークを目指すことに。
しばらく尾根を登り詰めると樹林帯を抜けて長浜の町が見える。大学の卒業式の謝恩会を開催したホテルが見えたりして、遠い記憶に想いを馳せる。
反対側を見れば彦根が見える。通った大学も見えそうで見えない。しかし、爽やかな秋晴れだ。
もう少し登ってズームしてみると大学が見えた。あの町に住んでいたんだなと、また遠い記憶に想いを馳せる。
ピークまでは一見爽やかな感じなのだが、やはりなんとなく湿っぽさはある。
振り返れば伊吹山が見える。トレランの若者が3人、下の方からじめっとした中を爽やかに走ってくるのが見えた。
東の方には避難小屋が見え、さらに先には名古屋市?と海が見えた。
西には西南尾根と琵琶湖、さらに対岸の比良山脈。この360度の風景は見応えがあった。
最高点もピークも結構な人で賑わっている。最高点でお昼を食べて、ピークには向かわずに西南尾根に足を向ける。少し歩いてから折り返してピークを踏んで、もと来た道を下山するつもりだった。
ここは非常に歩きにくかった。17年前も歩いているはずなのに、この感じが全く思い出せなくて歯痒かった。記憶なんて脆いものだ。あまりの歩きにくさに戻る気もなくなってしまい、このまま進んで今畑に下りて落合経由で周回することにした。今畑、落合間のトレイルが荒れていて通行止だという情報もあったので通れるか気になったのだが、まあ大丈夫だろうと。
西南尾根が終わる辺りで友人が淹れてきたコーヒーをいただいて休憩したのだが、そこからは彦根の町が一望できた。
西南尾根から笹峠までは登るのがかなりきつそうな急坂だった。
笹峠から樹林帯に入って見つけたヌタ場の足跡。あとで友人が同定して送ってくれた情報によるとハクビシンらしい。友人はトレイル上に落ちている胡桃の食べカスや獣の骨に興味しんしんで、同じ山に登っていても見るものが全然違っていて面白かった。ぼくは人の装備や、地形、植生、匂いがひたすら気になって仕方がない。
久しぶりの日帰り近郊登山だったが、低山は低山なりの難しさがあるなとあらためて思った。小屋のある北アルプスのようにトレイルは整備が行き届いているとは言えないし、その点では難易度は高く、人も多くはなく、ルートロスの可能性も高い。山は高い山に登るばかりが経験ではなく、近郊低山も含め、入山日数からくる経験が重要だと、原点の山が教えてくれた。