昨年秋の北アルプスソロ遠征以来、冬の間はここ数年恒例のスキー修行に打ち込んでいた。
記録的な暖冬で近場のスキー場は雪不足で、白馬、鹿沢へと遠征を重ねてなんとか滑走日数を稼いだシーズンだった。今シーズンはスクールに入校したりとスキーを始めて以来3シーズン目にしてなんとかパラレルスタンスへの入り口にたどり着くことができた。
GoProはほとんど回してなかったのでカット数が少ないけど繋いでみた。
そういうことで、冬の間はすっかり山はお休み。
スキーシーズンを終えて、そして、暖かくなってきたので気分的に山のシーズンが一気に開幕。まだいつどこに行くのか全く決まってないが、まずは道具からだということで、ペア用テントを新調した。10年前に屋久島遠征の際に買ったプロモンテVL-32が昨年の白馬岳遠征を最後に寿命を迎えたのだった。プロモンテVLシリーズはソロ用のVL-13も持っているので使い慣れている上に信頼感もあるのだが、物足りない部分もあったので継承せずに他ブランドにすることに。
求めるスペックとして、雨天時に全開にしてもフロア内が濡れない前室と、緩まずにテンションを張り続けるフライだった。
条件を満たすものとして、まず思い当たったのがアライのドマドーム2であったり、MSRやニーモなどの洋物テントだったが、洋物テントは円安の影響からの価格の高騰があり、早々に脱落。テントは消耗品なのでペア用とは言え、そこまでの対価を払う気にはなれなかった。少し重くなるがドマドーム2になるのかなと思っているところに、同じアライがオニドームという新モデルを出すという情報が入ってきた。
カタログを入手して見てみると、ドマドームを軽量化した上に同じような前室を確保しているようだ。フロアを台形に切り込んで前室を確保するというアイデアは面白いし、これで雨が降ってもフライを全開にして外の景色眺めながらまったりとコーヒーを飲んだりできるのではないかと嬉々として、ほぼ購入の決断をしていた。
早速ショップに行って手に取ってみると軽い。2人用のオニドーム2でカタログ値1480g、前のVL-32が付属品込みで2000gほどあったのに比べると500mlのペットボトル1本分の軽量化だ。ただ、VL-32が3人用だったのに対してオニドーム2は2人用なのでサイズは小さくなることになる。しかも特殊な形をしているのでサイズ感と、肝心の前室の具合を確認するために店員さんに張ってもらうようにお願いする。
久しぶりの新テント、素材の進化もあって手触りは未知の感触、色もいいオレンジでテンションが上がる。VLシリーズは吊り下げ式なのに対してアライのテントはスリーブ式だ。店員さんがスリーブにフレームを通すところで割と手まどう。使い込むと馴染んで通りやくなりますよ、ということだ。テント本体が立ち上がると、店内だからか随分と大きく見える。特殊な形ゆえにフレームが中央の頂点でクロスしていない。色々戸惑いも感じるが、実際使ってみないと分からないなというのが正直なところ。広さは2人で使うには十分、VL-32よりは狭くなるが保温性や耐風性を考えればジャストサイズの方がいいのかもしれない。
前室の確認のために店員さんにお願いしてフライをかけてもらう。ペグダウンしなくてもバックルで本体にとめるだけでフライにハリが出る。前室もできているようだ。美しいフォルムだ。新しいテントはいいものだ。惚れ惚れする。夏に薬師峠で幕営してコーヒー飲んでる絵まで脳内に出てきた。
では、と前室のファスナーを開けてみる。あれ?、カタログで見ていたより少し狭いか?、おかしいなと思いながらファスナーを全開にしてみると前室部分はフライに覆われていないようだ。真上から見てみると、本体フロアにはフライがぎりぎり被るか被らないかのところ。これでは雨が降るとフロアが濡れてしまう。前室に置いている火器類やシューズも濡れてしまうだろう。前室の片隅はフライが完全に被っているが狭い。
ドマドームの軽量版だと思い込んでいた僕の誤解もあったのかもしれないが、よく分からなくなってしまった。店員さんも始めて実機を目にしたみたいで前室部分のことなども聞いてみたが、コンセプトなどよく分からないようだった。これだと決め手に欠けるし、思っていたように前室が使えないのであるならば、まだ実績のない特殊な形状をしたテントを使うのはかなり冒険になってしまう。しかし、歴史のあるテントブランドのすることなので何か意味があるはずだと諦めきれずに他店に場所を変えて店員さんに聞いてみることにした。
そこで聞いた話によると、まずドマドームは山岳テントのカテゴリーには入らないこと、ツーリングサイドからの要望で開発されたということ。でも山でも使いたい、実際使っているけどもう少し軽いものが欲しいという要望に応えて開発されたのがオニドームということだった。微妙な前室は空間として捉えれば十分な機能を果たす、フライのかかり具合については、雨の日に全開にして濡れないというのは山岳テントのカテゴリーでは贅沢過ぎるということ、むしろフライをは閉じましょう、テントはそれぞれ一長一短でその人の使い方ひとつで性格は全く変わるし、我慢する部分も多いということだった。
という話を聞いて、ある部分では我慢するということを念頭におけば選択肢がかなり広がる気がした。ドマドームにするかなと思ったりもしたがやはり2000g超の重さとスリーブ式のフレームを3本使うというのが山で使うにはハードルが高い気がした。もちろん山岳テントとして使っているのは何度も見ている、槍の肩で幕営しているのも昨年見たので、要は使う人次第だということだ。ドマドーム、オニドームはペアで使うには妻が難色を示したので今回は見送ることにした。VL-13もそろそろ6年目なので、オニドームは次期ソロテント候補として残しておくことにした。
こだわりを捨てて色々と他ブランドも改めて見てみると急浮上してきたのがモンベルのステラリッジ2だった。今期からリニューアルでフライが別売りになり、しかも4色展開になっていた。仕様を細かくカタログでチェックしてみると、なかなかよくできたテントだということが分かった。まずフライをペグダウンするループがショックコードであるということ。よく改造でショックコードにしている人がいるがステラリッジは標準装備。ガイラインはテント本体から伸びていて、リフレクション仕様、これも標準装備。フライ、本体ともにビスロンファスナー、純正グランドシートを使えばフライをタープ的に使える、と細かい部分で魅せてくれるテントだった。
早速、ショップに行って張ってもらって、もう悩むのにも疲れていたので購入。完璧なテントではない。おそらく完璧なテントなど初めからはなくて使う内に馴染んでそうなっていくのだろう。
リフレクション仕様のガイライン。本体から取っているので、フライから取るのと比べるとシームテープの持ちはいいのかもしれない。
フライのファスナーは本体より少し余分に伸びていて風圧で開かないようになっている。
フライのショックコード、結構しっかりしていて力を入れないと伸びない。切れる心配はなさそう。
ベンチレーターは潰れないように立体に広がる輪っかが入っている。
フライ素材は30デニールのバリスティック®・ナイロン・リップストップ、耐水圧1,500mmでウレタンコーティング。
出入り口は短辺側なので前室はやや狭い。長辺側なら文句なしなのだが、軽量化重視の最近の傾向として出入り口は短辺側がトレンドらしい。
凍結、故障に強いビスロンファスナーはフライ、本体ともにするすると動いてストレスがない。
本体上部は30デニール。フロアも同じく30デニールと、ここが唯一の不安点。グランドシートは必須。40デニールぐらいは欲しいところかも。
サイズは奥に210cm、幅130cmとふたりで使うにはジャストサイズ。VL-32は3人用だったので狭くなった感は否めない。VL-32に比べると居住性は落ちるが、保温性が高まったり、何より軽くなったということがやはり大きい。
寝てみると身長177cmでぎりぎりな感じ。実寸、というか張り方で多少の誤差は出るのかもしれない。
フレームはDAC社製、細いのに驚いた。フロアの薄さなど、10年も経てば素材も色々と進化していて新鮮だ。
組んでみてまず感じたことはVL-32に比べると「華奢だな」という印象。素材の進化もあるだろうがユーザーのUL志向に合わせた部分も大きいだろう。30デニールのフロアには本当に不安を感じるので、グランドシートはやはり必須。グランドシートでどうせ重くなるんだったらフロアは40デニールあってもいいんじゃないかと思ったり。
店の人が言うには今のテントは極端に軽量化されているということ、初幕営で破れるとかよくあることなので扱いが繊細とか。消耗品なので5年使えれば十分だということだった。そこは使う人次第なので、なんとか次も10年は使いたいなと思っている。